今回の展覧会、50 Ways to live in Malaysiaはマレーシア独立50周年企画で、マレーシアの50人のアーティストによる、50の作品を展示したもの。タイトルはポールサイモンの50 Ways To Leave Your Loverをもじったものだそうだが、独立後のマレーシアのアート界のWho’s Whoとか、クロノロジーを作ろうとしたものではなく、またマレーシア美術の全貌を明らかにする、というようなものでもない。マレーシアに生きることというテーマについて、それぞれの作家がどう表現しているかを示することで、マレーシア美術の50年の流れを表したいのだ、というような控えめなことがカタログには書かれています。実際には、キュレーターの意図とは反して、私のようなマレーシア美術ビギナーには、傑作が並べられたこの展覧会はWho’s Whoを見ているようなもので、便利な展覧会でもありました。
入り口を入ると正面にBayu Utomoの、ついこの前Wei Lingギャラリーの新作個展に出品されていた、イギリスとマレーシアのイメージが左右に対比されている大作が一番手。
左手にはYEE I-LANNの写真。マラッカの写真館で撮影されていた記念写真をデジタル化し、子供の誕生日とか結婚式とか卒業式とか、テーマ毎に100枚並べるシリーズ。これは、確かマレーシアに来たばかりの頃、ペトロナス・ギャラリーの現代写真展で見たことがある。
うれしかったのは、フェミニズムアーティスト(と呼ばれているのか?)ENG HWEE CHUと、25歳という若さであっという間に亡くなった伝説のアーティストZULKIFLI DAHLANの作品の実物を見られたこと。特に、ZULKIFLI DAHLANは画集で見て、前から気になっていただけに、作品を見つけたときには興奮しました。かなり色が落ち、彼の作品に決まって登場する裸体の人々の輪郭もはっきりしないのだけど、これはもともとなのだろうかしら。1970年の作品とあるから、彼の18歳のときの作品ということになる。71年にはメダンで美術を勉強と資料にあるから、メダンに行く前の作品なのだろうか。いずれにしても、かなり初期の作品なのだろう。マレー語のタイトルは「ある家の真ん中の部屋」という意味だが、わけがわからなくて奇妙だけど、古代人の壁画を見ているような感じがする。
MY LIBERTY by ENG HWEE CHU
Ruang Tengah Sebuah Rumah by Zulkifli Dahlan
その他にも傑作が並んでいたわけだが、実はそのうちのかなりの作品は当国のアートコレクターとして名高いPakhruddin氏のコレクションから借り出されたもの。本業弁護士のPakhruddin氏は自分のオフィスの下のフロアーに私設ギャラリーを作っていて、そこに自分のコレクションを保管しているのだけれど、以前そこにお邪魔したことがあって、そのとき見た作品と、またこの展覧会で再会することができました。美術雑誌を見ると、この私設ギャラリーは公開しているそうです(ただし要予約)。
ペトロナスギャラリーはHari Raya明けには、YEE I-LANNを含む、女性作家の展覧会 Out of the Mouldが始まります。これも楽しみです。